イノベーション医薬品・医療機器記者会見

R・A・ブラッドウェイPhRMA会長 来日記者会見

4月12日(水)、来日中のロバート・A・ブラッドウェイPhRMA会長(アムジェン会長兼CEO)による記者会見が、ザ・キャピトルホテル東急(東京都千代田区永田町)にて行われた。

登壇したブラッドウェイ会長は、まず日本は高齢化により医療需要が増加している中で、新薬がこれまで社会に果たしてきた役割、超高齢化社会で革新的医薬品がもたらす利益について強調。最先端の科学が革新的な治療法によりケアの在り方を変える新たな時代を迎えている現代社会では、かつて化学合成薬品や様々な疾患の治療に同じ医薬品を使用したり、とりわけがん治療は放射線治療と化学療法が主流であった状況から、細胞医薬品に加え、遺伝子構造の違いにより個々の患者さんにターゲットを絞った医薬品の使用、患者さん自らの体内にある病気と闘う免疫システムを活用した免疫療法、CAR-T細胞療法、CRISPR(クリスパー)が登場している状況にあることを指し示す。そこで、10年間で世界的に見られた新薬・治療法の進展の具体例を紹介すると、これら革新的な治療法が患者さんの社会復帰や社会貢献を続けることを可能にした点を評価。とりわけ、かつて離職に追い込まれてきたがんサバイバーは、現在、5人中4人が仕事に復帰できていることを示すと共に、心血管疾患の新治療薬が1995年から2004年間にOECD加盟20カ国に導入された結果、入院費用が削減されたとして、導入されていなければ、70%高くなっていた点を強調した。

これらの進展を評価しながら、ブラッドウェイ会長は日本の薬価制度抜本改革については、①新薬創出加算の見直し②費用対効果評価(HTA)の導入③薬価調査と改定の毎年化——の点で、同意できないと意見。これが現在の日本における革新的医薬品を取り巻く環境であると指摘する。そしてこれらの改革は、決してイノベーションを推進するものではなく、「国民皆保険制度の持続」と「イノベーション推進」のバランスを欠いた改革であり、将来的に禍根を残すとの懸念も示す。とりわけ、新薬創出加算に関する迅速な決断は、①市場に出る速さでイノベーションを評価するのは不適切②企業要件は創薬の新たな手法を適正に評価していない③企業要件は中小企業よりも大企業に有利——の3つの論拠を挙げながら、イノベーション阻害を帰結する要因になりうると指摘。また、HTAの日本での導入に関しても同様で、①透明性の欠如②試行的導入における欠陥③海外の好ましくない経験——の3つの理由を示しながら、それがイノベーションと患者アクセスを阻害する可能性を高めていると示唆する。

そこでブラッドウェイ会長は、イノベーションを促進する政策が日本の患者さんの新薬へのアクセスを確保するために不可欠であるとし、業界の具体的な要望として、「新薬創出加算→新薬創出加算の問題点に対処する」、「費用対効果評価→他国の経験に学び、患者さんのアクセスを阻害することなく、オープンかつ透明性の高い進め方で医療技術評価制度を確立する」、「2019年の消費増税に伴う薬価改定→革新的な医薬品につぃては2年に1度の薬価改定を維持する」、「薬価制度改革のプロセス→決断がなされる前に、全ての関係者からの意見を取り込む、オープンかつ双方向のプロセスを確保する」——を呈示する。超高齢化により医療需要が増加し、医療費支出が増加していく中で、医薬品は高齢化社会が抱える課題への有効な解決策となるものであると述べたブラッドウェイ会長は、政府や医療従事者や国の支払機関等は、「効率改善→価値に見合った負担→ソリューションの発見」、といった過程を踏まえながら、製薬企業は革新的治療法の開発を継続し、医薬品の適正使用を促進し、幅広い患者アクセスを支援する取り組みを維持することの重要性を指摘する。日本のゴールは健康長寿社会であると述べたブラッドウェイ会長は、バイオ医薬品業界は日本政府および様々なステークホルダーと協力することで、より多くの問題を改善することが可能である点を強調した。