全国医学部長病院長会議が緊急記者会見を開催
10月16日、文部科学省記者会見室(12F)にて、全国医学部長病院長会議(AJMC)による緊急記者会見が行われた。東京医科大学の入試において、長期にわたって女性の受験者に対し一律で不正な点数操作が行われていたことが発覚して以降、文科省は医大・医学部の入試関連の調査を実施。複数の大学で不適切な事案があることが判明したことを受け、AJMCは10月13日付で「公平・公正な医学部入試の在り方の検討について」と題したプレスリリースを発表した(資料参照)。記者会見では、国民に理解される公正・公平な入試制度を実現するためAJMC内に新設した「大学医学部入学試験制度検討小委員会」の委員長を務める嘉山孝正氏が、医学部入試制度の在り方についてAJMCの見解を示した。
各大学にはそれぞれ独自のアドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針:AP)があり、一番の眼目は「より良い医療人なりうる人材を確保すること」である。嘉山氏は現在問題視されている性差(人数)、年齢(浪人)等についてAPに盛り込むことの必要性を示しながらも、米国のAPにもごく概略的なものにしか記載されないという事実を引き合いに、「少なくとも受験生にアンフェアだと思われないようなAPを作るべき。各大学は個性や伝統を考慮しながらAPに記載していくことになるであろう」と意見した。
また、入試における女性差別の問題を掘り下げると、「実際、出産・子育てで離職した女性医師の穴埋めを男性医師が行うケースは多いが、だからといって入試の段階で女性を減点するのはフェアではない」と強調。この問題は「働き方改革」と連動するもので、現場を見据えて性差をいかに扱っていくか、時間をかけた議論が求められると述べた。
一方、年齢差別について言及すると、「かつて50歳で医学部に入学した例が世間では美談にされたが、実際、その人は国家試験に通らなかった。もしその人の代わりに若い学生が入学していたら、医療提供できたのかもしれないと思うと複雑だ」と吐露。問題視されている年齢差別は、性差問題と同様、現実的に考えていくことの必要性を示唆した。
会場からは幾つか質問が上がり、その中で「医学部入試では、定量評価(学力)と定性評価(AOや小論文・面接)のウェイト付けをどのように考えているのか」との質問に対しては、「AOや小論文・面接を含めた人物評価は試験官の主観が入るため難しい。そこで『これがあればダメ』という“減点”を示すことを規範に盛り込みたい」とした。
AJMCは、医学部入試の在り方の規範をプレスリリース発表時より1カ月を目途に示すとしている。ただ嘉山氏は、これらの規範を示して終わりではなく、時代に応じて改善していく必要性も指摘した。