病院経営者に、今こそ聞いてほしい診療報酬改定と病院M&A

【第1部】2022年診療報酬改定から見る今後の病院経営

中林 梓:株式会社ASK梓診療報酬研究所代表取締役 

 令和4年度の診療報酬改定では、診療報酬本体の改定率は0・43%増となり、前回の本体0・55%より0・12%下がったもののプラス改定となった。前回の内容(地域医療構想の実現・かかりつけ医機能の強化・2040年の医療提供体制・薬局ビジョンの推進・医師の働き方改革の推進)を踏襲しつつも、「新型コロナウイルス感染症への対応」や、感染拡大により明らかになった課題を踏まえた地域全体での医療機能の分化・強化、連携等が新たに明示されることになった。ちなみに、診療報酬本体部分0・43%の内訳は、看護の処遇改善のための特例的な対応がプラス0・20%、不妊治療の保険適用のための特例的な対応がプラス0・20%、リフィル処方箋の導入・活用促進による効率化がマイナス0・10%、小児の感染防止対策に係る加算措置(医科分)の期限到来がマイナス0・10%で、これら以外がプラス0・23%である。総合的に見て今回の改定は、病院経営サイドにとって厳しくかつ幅広い内容となったという印象を受ける。今回の改定の重要なポイントは以下の通り。

・医療の質評価へ

・連携評価の新たなフェーズへ

・地域連携・院内連携・他職種連携

・データヘルス改革・デジタル改革の本格化

・かかりつけ医の評価と外来機能の明確化

・オンライン診療だけではなくオンライン活用の拡大

・急性期入院医療は何を何処を評価したのか

・地域包括ケア病棟の厳しい改定の意味

・回復期リハビリテーションの今後はアウトカム

・療養病床の中心静脈栄養評価の対応

・働き方改革と同時改定への布石を読み解く重要性

 まず、今回の改定の根底にあるのが「医療の質」の評価で、プラス0・23%には「地域医療の確保、質の向上のための財源」が含まれるようになった。また連携に関しては、地域連携や院内連携も加算の算定要件に加わった。

 次に、2040年問題(少子化による急速な人口減少と団塊ジュニア世代が高齢者(65歳以上)になることで高齢者人口が最大となる2040年頃に日本社会が直面するであろう内政上の危機)を見据えた「データヘルス改革・デジタル改革の本格化」が推奨されている。また、オンライン診療では、情報通信機器を用いた初診に係る評価251点が新設されると共に、再診料や外来診療料にも情報通信機器を用いた場合の評価73点が新設され、今までのオンライン診療料は廃止となった。また、400床以上の保険医療機関では、診療録管理体制加算の施設基準の中に、サイバーセキュリティ対策と医療情報システムのバックアップ体制の確保が望ましいとする要件に加え、定例報告で当該体制の確保状況について報告することが求められている。

 さらに今回の改定では「新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築」が重要課題とされたことを受け、診療所限定で初診料に「外来感染対策向上加算」が新設された。この加算要件として、「少なくとも年2回程度、感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関又は地域の医師会が定期的に主催する院内感染対策に関するカンファレンスに参加していること。また、感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関又は地域の医師会が主催する新興感染症の発生等を想定した訓練について、少なくとも年1回参加していること」等、通常の施設基準とは異なる要件が設定された。

 一方、かかりつけ医の機能・役割の強化も図られ(地域包括診療料・加算や、機能強化加算等で評価)、今後、外来機能の明確化・連携を強化する観点から、紹介外来を基本とする「紹介受診重点医療機関」が創設されることになった。これにより、勤務医の外来負担の軽減、紹介受診重点医療機関の入院機能の強化が図られ、かかりつけ医への逆紹介も増えるであろう。

 急性期に関しては「高度急性期」と「急性期」の2つに分けられ、高度急性期医療を高く評価する一方、一般急性期や地域包括ケアの病床機能については適正化が図られたのがポイントだと言える。

 さて、今回非常に厳しい改定であったのが地域包括ケア病棟。地域包括ケア病棟にはポストアキュート、サブアキュート、在宅復帰支援という3つの役割があり、在宅復帰の基準を満たさないと地域包括ケア病棟入院料3・4では10%引かれてしまう。従って、地域包括ケア病棟は収入が上がるところとそうでないところが出てくるであろう。回復期リハビリテーションに関してはアウトカムの中まで踏み込んできたといった印象を受ける。

 療養病床の中心静脈栄養評価の対応に関しては、中心静脈栄養離脱に向けた摂食・嚥下機能回復に取り組む療養病棟の体制を有していない場合は1ランク低い医療区分での評価となる。ここから読み取れるのは、療養病棟の経営を安定化させると共に、「医療の質を高める」(中心静脈栄養カテーテルを早期抜去し感染リスクを低減させる)ために、中心静脈栄養を実施する全ての療養病棟において、今後、摂食・嚥下機能回復に努めることを期待する国の方針であろう。

 さらに、働き方改革ではとりわけ勤務医の働き方を推進し、質の高い医療を提供する観点から、医師事務作業補助体制加算について評価の見直しが行われ、医師事務作業補助体制加算の1と2のいずれもが上がった。なお、次回改定の2024年は診療報酬・介護報酬同時改定の年であると共に、第8次医療計画も入ってくる大きな改定時期に当る。従って、今回の改定の中に含まれる布石を読んで、次回の改定を見据えた経営戦略を図っていただきたい。

 では次にこれらの改定内容を踏まえ、いかに対応していくべきかを考えたい。

❶ 地域連携・院内連携・多職種連携→医療機関が地域医療の一員であるとの意識をもち、院内・院外の連携関係で問題があるのなら洗い出す必要がある。

❷ データヘルス改革・デジタル改革の本格化→2040年問題を乗り越えるためには組織全体が意識してデータヘルス改革、デジタル改革を本格的に推進していく必要がある。感染予防ともなる非接触サービスの推進に向け、データヘルス改革・ICT化への対応は欠かせないであろう。

❸ かかりつけ医の評価と外来機能の明確化→どの病院が紹介型になっていくのか地域の状況を確認すること。連携医療機関を確認すること。

❹ オンライン診療だけでなくオンライン活用の拡大→組織としての取組みを明確化すると共に、連携先といかに摺り合わせをしていくか。

❺ 急性期入院医療は何を何処を評価したか→高度急性期ではない急性期の意味を改めて確認すること。地域の医療提供体制や地域医療構想を改めて確認すること。

❻ 地域包括ケア病棟の厳しい改定の意味→ポストアキュート、サブアキュート、在宅復帰支援という3つの役割を意識し、自院の現状の問題点を把握した上で対策を図っていただきたい。

❼ 回復期リハビリテーションの今後→今後はアウトカムを意識し、連携先の確認と実績のバランスを意識していただきたい。

❽ 療養病床の中心静脈栄養評価の対応→摂食機能療法を検討し、嚥下内視鏡検査(VE)・嚥下造影検査(VF)の連携体制を整えられたい。

 ところで、今回の改定では連携関連の加算が多く見られたのが特長であった。そしてその連携の手段として「オンライン化」の強化が推奨されている。もはやコロナ禍において従来のような対面サービスに戻す必要はないのは医療業界でも然り。地域連携・院内連携・多職種連携はオンラインの活用で繋がれる。例えば、患者の入院中のカンファレンスであってもオンライン開催なら参加自体も可能であるし、退院支援においてもオンラインで患者と病院とが繋がることができる。また介護事業所(ケアマネジャー)もオンラインで連携しながら現場を動かすことは可能。一方で、地域医療を円滑に進めるためにも自院の診療内容をオンラインで知らせることが今後ますます求められてくるであろう。これは医療DX推進と連動するものであり、ぜひオンラインを活用した連携強化をお願いしたい。

 このように今回の診療報酬改定は病院経営に大きな影響を及ぼすことが予想される。皆さまにはその動向を早急に理解し、経営戦略を練り仕組作りをしていただければと思う。


【第2部】病院·クリニック業界を生き抜くM&A戦略

土屋 淳:M&Aキャピタルパートナーズ株式会社執行役員

 当社は2005年に創業、本年で17期目を迎える。設立当初はM&Aが普及していない環境ではあったが、そこからM&Aを通じた社会貢献の実績を積み上げ、今ではグループ全体を通して、お悩みを抱えておられる経営者の皆さま、さらなる発展・成長を望まれている経営者の皆さまのお力となれるような体制を整えている。

 また当社の業界における立ち位置や強みとしては、M&A仲介業界における認知度、支払手数料率の低さ、取扱案件の平均譲渡価格、法令遵守イメージ、コンサルタント1人あたりの売上高・経常利益の主要5部門で業界ナンバーワン。加えて、累計950件以上のM&A実績(2022年4月末時点)を積み上げ、その内設立当初のM&Aご成約案件の多くは私自身が2008年に立ち上げに関わったヘルスケア部門のM&Aであり、これも当社の強みとなっている実績だ。さらに当社は創業以来、着手金が無料であることに加え、お客さまからいただく報酬の計算方式として株価レーマン方式(下図)を採用、他社と比べてお客さまからいただく手数料率は業界で最も低いという点にも強みがある。

 さて、医療業界を取り巻く経営環境は年々厳しくなっており、直近では政府のコロナ関連支援(補助金等)により、倒産件数は歴史的低水準となったものの、「後継者不在」や「企業の成長と発展のため」という譲渡理由からM&A自体のニーズは高まってきている。また、人口減少や少子高齢化、ならびに国が進める地域医療構想・地域包括ケアの方針により病床数の削減が年々図られていく中で、病院も生き残りをかけた状態に置かれている。こうした経営環境を踏まえ、今後求められるのは、自身の経営理念や経営方針に基づいた戦略と事業計画とをマッチングさせながら、「報酬・税制改定や人口動態等マクロ動向にも対処できるような体制構築」、「地域ニーズに適した付加価値の創造」、「人材確保とDX化・設備投資」、「永続的な地域医療への貢献」の4つの視点を持つことである。それゆえパートナーを探して協業していくことが自院の発展に繋がると考えて、M&Aを検討されている病院経営者が、現在急増してきている。

 また病院経営者100名を対象とした当社実施の経営実態調査(4月20日当社リリース)の結果によると、新型コロナウイルスの影響で減収した病院は48%。また、2022年4月実施の診療報酬改定に伴った経営戦略の見直しを実施している病院は半分であり、全体として二極化の傾向がみられる。一方、身近で実際にM&Aを経験された病院・クリニック経営者は25%。自身が運営する病院・クリニックの後継者の状況は、従来は一般的であった親族内承継が減少し、後継者未定・不在が42%となっている。親族内承継が減少している理由は、管理業務に伴う手間とコストや医療費抑制政策、人口減少に伴う需要減が挙げられる。また現在では、病院経営者になるより勤務医となる方が合理的と考える傾向も強い。加えて注目すべきポイントは、経営戦略見直しの選択肢の一つとしてM&Aを視野に入れている方が約60%と非常に高い割合にあり、M&Aは今後の病院経営に新たな可能性をもたらすと言えよう。

 ただ実際のところM&Aに関心はあるものの、漠然とした不安やコスト面から検討できていない病院経営者は多いが、病院経営者がM&Aを取り入れるメリットは多い。まず譲渡側のメリットとしては、①患者への診療を継続できる②従業員雇用を継続③法人名や施設名継続④医療と経営の分離⑤個人/連帯保証人を解除し、経営責任のリスクを排除できる⑥創業者利潤の確保︱—が挙げられる。また、譲渡することで単独経営では叶わなかったさらなる地域貢献ができるというメリットもある。一方、譲受側のメリットは、①病床権利の承継②既存患者の引継ぎ③ドクターや医療従事者スタッフの有資格者の人材確保④診療領域を拡大でき複合的な医療の提供が可能⑤地域で既に認知度があるので、広告宣伝費がかからない——の5点。このようにM&Aは双方にメリットをもたらす選択肢であると言え、実際、当社が携わったM&Aでも「後継者問題を解決し地域の中核病院として存続」、「属人的な経営から組織的な経営へ転換」、「50代オーナーが決断した創業者利潤の確保と業容拡大の加速」等の成功を収めた事例も数多い。

 ともあれ、当社がこれまで手掛けてきた病院M&A理由の大半は「後継者不在」であった。しかし今では、M&Aに対する病院経営者の見方は変わりつつあり、M&Aを事業承継の優良な選択肢の一つとして考えられてきているという手応えを感じている。改めて、病院経営者の皆さまには、M&Aを事業承継の優良な選択肢の一つとして認識されることお勧めするとともに、皆さまとの間でM&Aに関する情報交換をできればと考えている。


M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 URL: https://www.ma-cp.com/